1900-04-01から1ヶ月間の記事一覧

すべての小説は過去

小説は過去しか描くことができない。小説の言葉は、たとえ現在進行中の出来事を語っているように見えても、それは現実の光景を言葉に置き換えて語るという(構造の)間接性ゆえに、つねに「現実」よりも遅れ続ける。何かを語る言葉は、語られている(とされ…

純文学とエンターテインメント文学

小説には純文学とエンターテインメント文学という区別がある、と言われている。もっとも、こうした区分はもっぱら純文学勢によってなされるか、純文学を過度に意識した一部のエンターテインメント文学勢によってなされるか、のいずれかであり、世の人々の多…

自作を読むということ

自分の書いた小説を読むことは難しい。なぜなら作者にとって小説は、じっさいに書かれた実物の小説である以前に、想像的に書こうとした小説でもあるからだ。書かれた小説そのものから、書こうとした小説の影を引き剥がして読むことは、書いた本人にとってほ…