2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

超怖Η全話ショートレビュー(1)

「超」怖い話シリーズの最新刊、平山夢明編著『「超」怖い話H(イータ) (竹書房文庫)』(Ηはエッチじゃなくギリシャ文字でイータと読む)を田町のローソンで見つけたので購入。 ここ数年は半年ごとの刊行というハイペースが定着している。それでも次回は半年…

ブレーメン

近所の偉大なブックオフにてこないだは河井克夫『ブレーメン』を入手する。かつてガロ誌上で初出を読んだことのある作品も多いが、描線も作風も世界観も微妙に不安定に揺れ動きながらまるで歩いているうちに壁が曲がったり伸びたり消えたりしてかたちの変っ…

寺山サーチ

このところ「寺山修司+短歌」とかそれに似た検索ワードでここにくる人が以前より微妙に多い気がするんだけれど、何か寺山の短歌が話題になるようなことでも最近あったのかな世の中では。

若者たちへの伝言 屋上が踊り場の役目をはたしている建物の十三階で、私は今朝からひとりで暮らし始めている。踊り場は上空にうかぶ観音様のかたちをした屠場にいたる階段の中途にあって、だから窓の外を斜めに横切っている鉄製の階段には毎日牛を引いて博労…

顋門と震動

ヴィアンの『心臓抜き (ハヤカワepi文庫)』を風呂で読んでいたら「顋門(ひよめき)」という知らない言葉が出てきたので風呂を上がってからヤフーの辞書で調べた。すると「幼児の頭蓋骨の泉門(せんもん)のこと。骨がまだ接合していないために脈動に合わせて…

動きについての覚え書き

二つの目が横並びに配置されている関係で、人間の視界はタテよりもヨコ方向に広くなっている。そのため垂直に動くものよりも、水平に動くもののほうが比較的長い時間視界に滞在するから、目で追うこともそれだけ容易にできるし、垂直移動するものは視界に収…

ゴミの話

出がけにアパートの前に出していった燃えないゴミの袋が、夕方帰宅したらそのままで残っていた。いくつか一緒に並んでいたほかの住人のゴミは回収されている。私が出したものだけが残っていたのだが、猫が荒らしたと思われる穴が袋にはいくつもあいており、…

保坂和志「揺籃」(『明け方の猫』所収)を読んで

過去に経験した出来事を今ここで思い出して語る、ということのなかにすでに夢を見ることに通じる道のようなものができている。それは単に過去の経験の正確だったり不正確だったりする再現なのではない。小説は原則として「過去に経験した出来事を思い出して…

「揺籃」のつづき

「揺籃」は終盤になってちょっと二枚目になってしまうところが惜しいと思った。それまでのたとえばトレーナーがとりもちで顔に貼り付いてしまうとか、電車の網棚の上を這って進むとかいう馬鹿馬鹿しい夢のような描写がなくなってなんだか文学的になってしま…

回復への途

ゆうべの新年会のダメージで今日はずっと寝たきり状態である。ダメージは精神的なものではなくアルコール的なものだ。まだ少し世界が回転運動をすることをやめていない。これから風呂に入って体内のアセドアルデヒドを精算するつもりだが入浴にその効果があ…

お馬鹿さん 女の子しかできない仕事をぼくがすることになった。「あなたならきっとやれると私は信じてるのよ」階段の踊り場でやさしく肩を叩かれたとき、上司の指先から花のようないい匂いがただよってきた。にわかにぼんやりする頭でぼくは、思わずこの仕事…

幽霊人間の殺伐

年末年始休みの明けた図書館で借りてきた小池壮彦『真夜中の手紙』、蜂巣敦『殺人現場を歩く』、保坂和志『明け方の猫』のうち『真夜中の手紙』を今読んでいる。ゆうべなかなか体の芯までぬくまらない長風呂の友にこの本を持ち込んでいて気づいたのだけど、…

閉園後の世界

実家から歩いて二十分ほどの距離にかつて横浜ドリームランドという遊園地があり、数年前に閉園したのち今では跡地の一部が公園になっている。公園部分が完成してから初めてこの正月に足を運んでみたのだが、遊園地時代にそこにあった巨大観覧車などのアトラ…

多幸感はたそがれの色 そんなに悪い感じの事故じゃなかった。わたしは真っ赤な夕焼けが真っ黒になるところを、帽子のふちの下からこわごわ見てた。でもそんなにひどい「真っ黒」じゃないと思った。これなら頭の悪い男にビール瓶でぶたれた時よりずっとまし。…