恐怖のセオリー

 われわれはみな、自分自身を恐れないわけにいかない。なぜなら、私は私自身に一生のあらゆる場面をつきまとわれる運命にあり、私は私のあらゆる無防備な瞬間に必ず至近距離(というより距離はゼロなのだが)で立ち会っているからである。「私はその気になりさえすれば、いつでも私自身をたやすくひねり殺すことができる」。
 ……つまりストーカーという存在が真に恐ろしいのは、かれらが本来定員一名(=自分のみ)の領域に影をちらつかせるため、他人ではなくまるで私の分身が突然私の身を付け狙いはじめたかのように錯覚させるからなのだ。この錯覚には、われわれが潜在的に自分自身に対していだく深刻な不安が反映している。