2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧
今年の春、神がかり的な発熱により18きっぷ伊勢の旅を断念したことは何度か日記に書いた。その旅の発案者でもあったライターの神田ぱんさんが著者の一人である『鉄子の部屋』という本が出ている。私の行けなかったその伊勢旅行のことも載っていた。鉄子とい…
バラ線のむこうも道は続いている。私だけが引っかかって取り残されたのだ。
バラ線に囲まれた墓石がびっしょり濡れている。おやおや、まだこんな夢を見ているのかと墓の下の自分を起こそうと思うが、痛くて近づけない。太鼓がどろどろ鳴っている。
回すと首の抜ける娘たちが曲がり角ごとに立っている。家に招く客を捉まえるために。遠くからそっと覗けば曲がり角の先は真暗な森林だ。私も娘の首を回したくてたまらない。
私達の揃った酒場を訪れたのは船長だった。すぐにうちとけ法螺話に花が咲く。そこへ別の船長が現れると「奴は偽物だ」と船長を指さした。指さされた船長は鮪の頭になった。
新・恐怖生活 ちょっと前から別日記をまた増やして書いております。むこうはより独り言のような、脳から直接書くようなものになるのだと思います(まだちょっと勝手が掴めず硬いですが)。いちおう恐怖問題限定ですが。すべてのことが怖ろしいんだと言えばす…
午後遅く、弟子の円枢閣が電話に出ると無言で切れたといって腹を立てている。三回目には私が出ると相手は仕入先の紙屋で「先生の家は犬が電話を取るのですか」と驚いていた。
床下が雑踏のように騒がしいので零時になったのだと分かる。毎晩日付が変わると五分間だけそれは続くのだ。畳を上げて覗けば音は止むが、その分翌日に雑踏の時間が長くなる。
階段の途中に絵を飾るのはよくないよと四垣さんに言われた。階段ではじっと眺める人がないから絵の柄が変っても気づかれない。ゆえに呪術の装置に使われやすいのだという。
偽物の両親が私の働かないことを嘆くので「偽物の癖に煩いんだ」と怒鳴りつけた。二人は顔を見合わせ「いつから知ってたの?」と訊いたが「俺には分かるのだ」とだけ答えた。
庭掃除を弟子の円枢閣に命じて外出した。帰宅すると庭が線香臭い。「ひと掃きするたび人骨が浮いて出るので供養していた所です」そう云って掌に見せたのは錆付いた釘だった。
とび回っている蠅を店員の大女が何度も打ち損じた。そのたびテーブルで箸立てが揺れた。よく見ると女の眉から細い糸がのびて蠅と繋がっている。あれで考えが伝わるのだろう。
ある朝隣家に通夜が明けたところへ、回覧板を届けにいくと留守だった。無用心にも開け放った玄関から死人の寝る部屋が覗き、電話のベルが切れては鳴るを繰り返している。
弟子の円枢閣が重箱一杯に人骨を抱えて帰ってきたので、赤飯を買いに行ったのではないかと質すと、途中墓場で交換して参りましたという。骨はいずれも短い小児のものだった。
ボタンをまばらに留めたシャツの男が、隙間から長い草を垂らし億劫そうに病院に入っていった。それを見ていた主婦が噂話を始めたのを聞くに、男はかつて庭師だったという。
もともと風船並みに頭のからっぽな私ですから、ふだんはよだれを垂らしながら空の雲をかぞえたりして楽しく過ごしています。 ところがおとといは出版業界という、私がちらしの裏なら日経新聞なみに字の書き込まれた頭脳をもつ方々が、日々その教養を惜しげも…
掌編にあえて身の丈にあわない大きな物語を語らせ、その遠近法の狂いを狙うという書き方がある。 ボルヘスはほんらい長篇サイズの物語を掌編に書くと公言していたと思うけど、この発想は基本的に小説家というより詩人のものだと思う。 小説はだらだらしたも…
でたらめを書く技術、には二通りあって(もっとあるかもしれない)一方はでたらめを目一杯でたらめさを極めて描ききるという技術、もう一方はでたらめなものを一見でたらめに見えない整った外見の中に(でたらめのまま)閉じ込めるという技術、である。 たと…