2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

実話はどこにあるのか

河井克夫著『日本の実話』というマンガがものすごく面白そうだ。 「そうだ」と推量になってるのはまだ読んでないからで、本屋で数話だけ立ち読みしたところ「この本は是非読むべきだ」と思った。下品な言い方をすると「この本は使える」と思った。思ったけど…

心臓団の三人 ぼくらはたった三人の団体だった。ぼくらは「心臓団」を名乗った。 団旗には真っ赤な心臓がひとつ描かれた。モデルになったのはK子の心臓だ。 「かわいく書いてよね。冬眠中のカエルみたいに」 注文をつけながらK子はシャツの裾をまくり上げ…

前後不覚の読者

読書には「わけが分かりたいから」する読書もあれば「わけが分からなくなりたいから」する読書もある。怪談本を読むのは後者、少なくとも私の場合はそうだ、わけが分からなくなりたいから怪談本を読む。もちろん怪談本に限らずそういう本(わけが分からなく…

月は太陽の幽霊 掘り進むのは井戸でなくらせん階段なので、私たちの関心はやはり消えることのほうにある。森がそこで内側に尽きているような、くり貫いたような空き地で。それぞれの方角から、それぞれの獣道をつかい迷い込んできたぼくと、彼女と、君と、あ…

意味の断崖

あらゆるものの裏側に死=無が張り付いていることの怖さについて考えるつもりだったが、過去日記でそのあたりは何度も言及してることがさっき読み返してみてわかったのでひとまず考えるのを中断して過去の自分の意見を読み返す。老化による記憶力の低下とい…

よみがえる原理主義

先日も書いたようにビーケーワン怪談大賞に投稿した「歌舞伎」という話が大賞をいただき、その後くわしい選考過程も公開されました。この貴重な経験にくわえ、8/11の日記にコメントを下すったid:sakapi(佳作入選作「ねじれた人と折れた人」の作者)氏とのや…

体内時計の夏 短針がハートに突きつけているあいだ長針がその他臓腑をひとつごと示し、秒針がそれらを景気よく順番に刎ね落としてまわるだろう、神よ。よく灼けたアスファルトにきみの五臓六腑が出そろうまでの時間わずかに十一分。 某工場長 まがりくねるこ…

「第3回ビーケーワン怪談大賞」

で、大賞をいただきました。 http://blog.bk1.co.jp/kaidan/ 受賞作以外の「浄霊中」「着信」あたりも自分ではけっこう気に入ってるのでよかったら読んでみて。

蝋製喜怒哀楽 快速の止まらない駅の伝言板で人間宣言を済ませてきた元・蝋人形のありさがはじめて目撃した人身事故の現場は、こうした事故のうちでもっとも酸鼻な様相を呈しており具体的にいうと裂けたシャツの切れ目から血液とともに内臓が線路にはみだして…

冥王星までタクシー 毎朝起床後三十分もあれば完全無欠な美しさを手に入れることができる君にさえ、深々とああいう種類の穴のあいてる恐怖についてぼくはいくらでも語れるだろう。 (近くで見ると目玉は充血して皮をむいた葡萄のようだね) ではごきげんよう…

スパイ写真 この国はつねに頭上から見わたされているのだ。将棋盤上の駒のように人は頭頂部にそれぞれの役割を文字で記されながら、頭上の視線が帯びていく躊躇と決断の色合いをからっぽな自由意志をもって即座に代行する。 たとえばこの写真に見覚えはない…