1900-02-01から1ヶ月間の記事一覧

小説的視界について

小説において、風景はつねにゆっくりとあらわれる。小説の読者は、風景を瞬時にして視界に収めることはできない。まずはじめに時間が存在し、読者はある程度の時間の流れを経験したのちに、事後的に、ようやく風景を視界に収めることができる。 たとえば、小…

小説を書くことの簡単さについて

小説を書くことは、実はひどく簡単なのだ。なぜなら、たとえばリンゴというものを小説に書こうとしたとき、リンゴのことを表す「リンゴ」という言葉があらかじめ存在するのだから、書き手はそれを使えばいいし、原則としてそれしか使いようがない。そして読…

不自由について

小説を書くことは、自由と不自由のあいだで書くということである。あるいは、無限の自由を有限の不自由に置き換えていくように、小説は書かれるだろう。それはどういうことか。小説がまだ書き始められる前、目の前には無限の自由が広がっている。だが一行目…