恐怖

なにごともなかったようにふたたび書きはじめる。そしていきなり宣伝をしますが宣伝のために再開したのではなく、何がということもなく文章がなんとなく書きたいときに書ける場所をあけておく、部屋の鍵をあけておく、ようなつもりで二年八ヶ月ぶりに窓あけ…

固有名詞の幽霊について(Twitterより)

文章を読んでて、そこに影も形もない固有名詞を読み取ってしまうことがある。あれは一種の幽霊だな。10:11 AM Jul 20th 読んでて、というかざっと眺めたときに固有名詞(おもに人名)を見つけて、改めて読んでみるとどこにもない。注意深くさがすとその固有…

間に合った

ビーケーワン怪談大賞ブログ http://blog.bk1.jp/kaidan/ 『蛾』/我妻俊樹 http://blog.bk1.jp/kaidan/archives/010057.html 『薫』/我妻俊樹 http://blog.bk1.jp/kaidan/archives/010066.html 徹夜したよ!

てのひら怪談&怪談大賞

([か]2-2)てのひら怪談 己丑 (ポプラ文庫)作者: 加門七海,東雅夫,福澤徹三出版社/メーカー: ポプラ社発売日: 2009/06/10メディア: 文庫 クリック: 10回この商品を含むブログ (8件) を見る文庫版第二弾発売されました。拙作も三つ収録。 母体になってるビーケ…

脳内都民として

あの人の脳内山谷にはあるのですから。 われわれ都民は脳内知事が現実の首都の知事も兼ねるという未曾有のスペクタクルをこそ味わうべきなのです。 現実の都民は、脳内知事の脳内都民にも自動的に二重登録されています。 知事の脳内鉄道である大江戸線は、現…

自己ベスト

自己評価と、他者による評価はつねに食いちがい続けるものだろう。 これまで私の書いた八百字小説で自己評価が一番高いのは、今年の怪談大賞に出した中の一本「私の未来」である。私は怪談に、そこに何も書かれていないものの重量を静かにつたえる語りの軋み…

怪談とリアリティ

ビーケーワン怪談大賞の結果が出る。 http://blog.bk1.jp/kaidan/ 私の書いた「百合」も佳作に入っていた。 選考会レポートの中で、福澤徹三氏が怪談を取材する重要さを語っていた。私自身は取材をしないのであれだけど、怪談書く人はたとえ小説でも取材はし…

鉈と私

昨日締切になったビーケーワン怪談大賞に今年も応募。全投稿作は下記URLで公開中。 http://blog.bk1.jp/kaidan/ 私が出したのは「百合」「バス旅行」「私の未来」の三作。 『てのひら怪談2』十作レビューの過程でかなり明確になってきた、自分の読みたい=…

『てのひら怪談2』を1/10読みながら(その10回目)

ようやく十作目となります今回。開始からだいぶ時間かかってしまいましたが、これで最後です。 一作取り上げるごとに、何か自分の中で怪談や掌編小説について日頃から考えたいこと、について一つずつ考えてみる口実にしようと思っていたのです。が、どうにも…

『てのひら怪談2』を1/10読みながら(その9回目)

「橋を渡る」峯岸可弥 作者の意識が行き届いた、隅々までコントロールされた文体で書かれていると感じた作品です。 とくに目を惹くのは読点が使われてないことと、冒頭の一文だけが過去形で、残りはすべて現在形で書かれていることの二点ですが、特に後者は…

『てのひら怪談2』を1/10読みながら(番外編)

書くためにする引きこもり、略して書きこもり生活に一旦区切りがついたのでそろそろ残り2作のレビュー再開したいですが、あれは書くのにかなりエネルギー要るのでまだちょっと頭の中の様子見として番外編からやります。 怪談大賞ブログのほうで気になってた…

無意味と作品

私が小説や、小説に似たいろいろのもの(漫画や短歌や実話怪談や批評や映画など)に求めるのはつねに無意味さであると思う。 無意味さというのはただ単に何もないということではない。ただ何もないことに私は無意味さを感じることができない。無意味は必ず意…

週刊てのひら怪談に

ポプラビーチ「週刊てのひら怪談」(毎週火曜日更新)に昨日、拙作「青い花」という八百字怪談が掲載されています。無料なので読んでも損しませんよ。読んだら素晴らしいのでぜひ金を払いたくてたまらない、という人は今度カツカレー奢って下さい。なんか今…

『てのひら怪談2』を1/10読みながら(その8回目)

「問題教師」貫井輝 八百字という短さは読者より書き手にとっていっそう“短い”のではないか。なんとなくそう思うんですが、たとえば私は短歌もつくるけど、短歌とくらべて二十倍以上の字数があるから書くのが楽かというと、全然そうではない。むしろ短歌より…

『てのひら怪談2』を1/10読みながら(その7回目)

「怖いビデオ」崩木十弐 私が怪談に求めてやまないのは、単に恐怖とか不思議といった言葉では片付けることのできない、落しどころのない不安定な感情を惹き起こされることです。 そのためか、何も怖いことや不思議なことが起きないのに怪談としか言いようの…

『てのひら怪談2』を1/10読みながら(その6回目)

「使命」水棲モスマン この作品が巧いと思ったのは、レストランの看板絵の取り扱い方です。牛がナイフとフォークを握って、同類の肉を前に笑顔を浮かべる絵。鳴き声に由来する、何のひねりもないだじゃれ台詞を書き込まれた、キッチュな看板絵。この絵をわれ…

『てのひら怪談2』を1/10読みながら(その5回目)

「カミソリを踏む」朱雀門出 この作品は一人称の、ほぼ現在形だけで書かれています。 一人称の語りには“語る私”と“語られる私”という二人の私が発生することはわりとよく知られていますね。 選手と実況アナを一人で同時に務めるみたいな「私」の役割の分裂が…

『てのひら怪談2』を1/10読みながら(その4回目)

「磯牡蠣」有井聡 この作品の魅力を一言でいうと「実話的な迫力」とでもいうべきものでしょうか。 西暦や固有名詞、バカ牡蠣という馴染みのない言葉などが説明無くいきなり並ぶ。怪異もその流れで当然のことのように描かれる。いちおう不思議な事件として語…

『てのひら怪談2』を1/10読みながら(その3回目)

三回目をやります。朝晩咳が止まらなくてつらいです。 「灯台」牧ゆうじ この作品、まず文章が好きです。文章にかぎっていえばこの本の中で一番好きかもしれない。 私は教養がないのでアホみたいなたとえになりますが、翻訳小説みたいですよね。○○文学、とい…

『てのひら怪談2』を1/10読みながら(その2回目)

「厄」松本楽志 この作品は『てのひら2』の中では比較的読者を選ぶというか、広く流通するタイプの書き方ではない小説ですよね。 批評用語としては間違った使い方だと思うけど、「厄」はリアリズム小説ではない、という言い方を仮にしてみようと思います。…

『てのひら怪談2』を1/10読みながら(その1回目)

今気づいたけど私の選んだ十作。筆名を見るかぎり、作者が全員男性っぽいですね。実際は違うかもしれないし、事実そうだとしても偶然にすぎないけど、こと怪談掌編に限れば私は男性作者の書いたものが好きなのかもしれない。と、何となく納得してしまうとこ…

『てのひら怪談2』を1/10読みながら(その0回目)

『てのひら怪談2』収録作者による全作レビューがあちこちで進んでいる(参照:http://blog.bk1.jp/genyo/archives/2008/12/post_1191.php)。尻馬に乗って何か書きたいけど、全作はまずむり。感想を百本分書き分けるには、私のもちあわせの引き出しが少なす…

首にまつわらない妙な話

きのうから首が痛かった。くわしくいえば背中の肩甲骨の下あたりから首のうしろにかけてが痛い。寝違えたのかもしれないが、朝起きた時はあまり痛みを意識しなかった。夕方買い物に出て帰ってきてから痛みが強くなった気がする。買い物袋をいくつか提げて帰…

てのひら怪談2

加門七海・福澤徹三・東雅夫編『[rakuten:book:12645085:title]』(ポプラ社)が発売されました。拙作「客」も収録されています。 今回は全百話の作者が全百人という一期一会な仕様でより百物語感がアップしております。 帯文のおひとりが平山夢明さんなので…

別アカ日記

新・恐怖生活 ちょっと前から別日記をまた増やして書いております。むこうはより独り言のような、脳から直接書くようなものになるのだと思います(まだちょっと勝手が掴めず硬いですが)。いちおう恐怖問題限定ですが。すべてのことが怖ろしいんだと言えばす…

でたらめを保存する

でたらめを書く技術、には二通りあって(もっとあるかもしれない)一方はでたらめを目一杯でたらめさを極めて描ききるという技術、もう一方はでたらめなものを一見でたらめに見えない整った外見の中に(でたらめのまま)閉じ込めるという技術、である。 たと…

女神の順番

本日更新のポプラビーチ「週刊てのひら怪談」に拙作が掲載されています。 http://www.poplarbeech.com/kaidan/kaidan.html 我妻俊樹という名前で載っております。鳥のフンに降られたのは実話です。 でも鳥のフンは臭くなくて白い絵の具溶いた水みたいなので…

ご当地怪談

西荻てのひら怪談募集中。4月末日〆切り。 http://www.poplarbeech.com/kaidan/event/index.html 怪談につきもののネガティブな要素の取り扱い、をどうするかという問題がご当地怪談の場合はあると思うんですよ。そういうのをあんまり排除すると怪談として…

タテ、ヨコ、てのひら

人間の視界は横に広い(目が横に並んでる)ので、横書きの文章は縦書きより多くの文字を同時に目に入れることができるわけです。つまり横書きのほうがずっと効率よく読めるはずなんだけど、なぜか日本語では縦書きが標準なんですね。 そのことと、日本で短詩…

みじかさ

短さと怖さのあいだに浅からぬ関わりがあることはよく知られている。いわゆるホラー作品において、長編より短編のほうが怖いとか、商業映画より素人の撮影した心霊ビデオ(もしくはそれを偽装した作品)が恐ろしい、といった経験的な知識がそう思わせるのだ…