怪談とリアリティ

ビーケーワン怪談大賞の結果が出る。
http://blog.bk1.jp/kaidan/
私の書いた「百合」も佳作に入っていた。
選考会レポートの中で、福澤徹三氏が怪談を取材する重要さを語っていた。私自身は取材をしないのであれだけど、怪談書く人はたとえ小説でも取材はした方がいいと私も思う。仮に“人間の想像力に限界はない”のだとしても、たとえば「怪談」というフレーム=先入観を与えられたとたん、人の頭に思い浮かぶ景色は驚くほど似てしまうものだ。その点むしろ創作より実話のほうが自由、という逆転があると思う。どんなへんてこな出来事でも実話=実際に取材したという事実があると、取替えのきかない細部となって作品をその位置に固定する。つまりたとえ創作でもその細部に関して作者は責任を負えない、ただ手渡されたものを読者へリレーするのだという態度が生まれ、その回路がいわゆる実話的なリアリティを生じさせるのだと思う。
書き手の全能感、みたいなものをへし折る非情な事実性をどう取り込むかというのは、フィクションが複雑さを獲得するために必要な悩み所だろう。