恐怖

てのひら怪談

ポプラ社のウェブマガジン・ポプラビーチで毎週火曜日更新の「週刊てのひら怪談」というコーナーが先週から始まっております。今週、すでに日付かわって今日になりますが、私の書いた「亡者線」という掌編も載ることになっております、ということの宣伝にまいり…

歪みと実話

『幽霊物件案内―怪奇探偵のマル秘情報ファイル (ホラージャパネスク叢書)』などの小池壮彦氏が描く怪談実話は、ひとりの人間の視野の限界からくる見通しの悪さが恐怖の温床となっているところがある。それは個人のビジョンにつきものの歪みをあえて温存する…

花とチャック

今日は歌葉新人賞(ネットで公募され、BBSで公開討議、会場で公開選考される短歌の新人賞。今年第五回をもって終了)候補作の発表される日です。 三人の選考委員の先生のうち、正午を回った現在加藤治郎氏の選が公開されています。 http://www.sweetswan.com…

恐怖映像

夏の風邪は不快感が体調のものか気候のものなのか、境目を見失うところがいやですね。日本中の不快指数が私の風邪のせいみたいに思えかねないところが。 (これからしようとしてる話と関係ないけど、日本列島はどことなく人体に似てる、北海道が頭みたい、な…

〆切られて。

日付変わって昨日はビーケーワン怪談大賞の〆切日でしたが、すべり込みで一本だけ送りました。 『茉莉花』。 今年はもう(スイッチ入れるのが)間に合わないなーとほぼ諦めていたものの、読み始めたばかりの超怖の最新刊がぎりぎりで(あっこんなとこにあっ…

夏だから。

ひさしぶりで日記でも書こう。知ってる人しか(ほぼ)見てないから気楽だし。という迂闊な気持ちでつまらない日記をいくつか書きとばし、しっぽを巻いてミクシィから帰ってきました。白いTシャツから黒いブラを透けさせて自転車を漕いでった、世田谷の知ら…

恐怖と自由

恐怖は我々の人生に居場所を広げる効果をもっている。 何を好き好んで「世界の発狂した部分」の幻影に付け狙われてみたがるのか。我々をこの世から突き落とそうとする殺人狂や、あの世へ引きずり込もうとする怨霊のドラマに夢中になるのかといえば、この世界…

超怖Η全話ショートレビュー(6)完

平山夢明編著『「超」怖い話H(イータ) (竹書房文庫)』全話に短い感想を書いていくシリーズ最終回。 廃社 何気なくつぶやいた「予言」が「的中」するまでに誤爆的に怪異をひきおこす話。にも深読みすれば読める(母親が口にした比喩と娘が目撃するあれの形状…

超怖Η全話ショートレビュー(5)

寒空の下の徹夜バイトから昼前に帰ってきて、眠くてたまらないのだがうまく眠れないまま日が暮れた。頭も体も全然使わない仕事な為疲労がきわめて局部的なものでしかなく、つまり24時間仕事らしい仕事もせずひたすら道端に突っ立ってたり、公園のベンチで震…

超怖Η全話ショートレビュー(4)

平山夢明編著『「超」怖い話H(イータ) (竹書房文庫)』(竹書房文庫)全話に短く感想をつけるシリーズ。 前回一話分飛ばしていたので、今回はその話(「オーラ」)から。 オーラ 幼児語の意味を明かすタイムラグのさりげなさ。エッセイ風。 土いじり ガスメー…

UHFで心霊ドラマ

このあいだ帰宅するときふとアパートの屋根を見上げると、「あ、UHFのアンテナがあるぞ」と私は驚いた。うちのボロアパートにはUHFのアンテナがなかったはずなのである。少なくとも私がここに引っ越してきた十年前には、確実になかった。横浜から今の…

超怖Η全話ショートレビュー(3)

平山夢明編著『「超」怖い話H(イータ) (竹書房文庫)』(竹書房文庫)全話レビュー三回目。 萌し 1ページ目に省略/圧縮されている情報量がさりげなく只事でない。平山節は内に視えないバロウズを飼っている。また返答に見える「うーん」の入り方の呼吸とか…

超怖Η全話ショートレビュー(2)

平山夢明編著『「超」怖い話Η』全話の感想。その二回目。 どんどん変に…… 平山怪談の定番話法にふいにおとずれる切断。必要最小限の言葉で(最小限ゆえ機械のように容赦なく)地獄のとば口まで運ばれる。 故障 「魂って上にあがっていくものでしょう」という…

超怖Η全話ショートレビュー(1)

「超」怖い話シリーズの最新刊、平山夢明編著『「超」怖い話H(イータ) (竹書房文庫)』(Ηはエッチじゃなくギリシャ文字でイータと読む)を田町のローソンで見つけたので購入。 ここ数年は半年ごとの刊行というハイペースが定着している。それでも次回は半年…

動きについての覚え書き

二つの目が横並びに配置されている関係で、人間の視界はタテよりもヨコ方向に広くなっている。そのため垂直に動くものよりも、水平に動くもののほうが比較的長い時間視界に滞在するから、目で追うこともそれだけ容易にできるし、垂直移動するものは視界に収…

幽霊人間の殺伐

年末年始休みの明けた図書館で借りてきた小池壮彦『真夜中の手紙』、蜂巣敦『殺人現場を歩く』、保坂和志『明け方の猫』のうち『真夜中の手紙』を今読んでいる。ゆうべなかなか体の芯までぬくまらない長風呂の友にこの本を持ち込んでいて気づいたのだけど、…

こわいということ

五年前に浅野さんとしたこの対談が読み返してみたらかなり面白い。当時もけっこう面白い話ができたという気がしてたけど誰かから面白い、と言われることがなくて時間がたつうちにそんな気がしてたことは忘れ去った。だがたまに思い出したように読み返してみ…

怪談と近況

ビーケーワン怪談大賞応募作のうち、「歌舞伎」以外で出来を自分で気に入ってる話をこちらにも(怪談大賞ブログでは全応募作が今も読めるようです)貼りつけておきます。自分用保存版。あの短期間によく五本も(没のを含めるとそれ以上)書いたもので、ああ…

実話はどこにあるのか

河井克夫著『日本の実話』というマンガがものすごく面白そうだ。 「そうだ」と推量になってるのはまだ読んでないからで、本屋で数話だけ立ち読みしたところ「この本は是非読むべきだ」と思った。下品な言い方をすると「この本は使える」と思った。思ったけど…

前後不覚の読者

読書には「わけが分かりたいから」する読書もあれば「わけが分からなくなりたいから」する読書もある。怪談本を読むのは後者、少なくとも私の場合はそうだ、わけが分からなくなりたいから怪談本を読む。もちろん怪談本に限らずそういう本(わけが分からなく…

意味の断崖

あらゆるものの裏側に死=無が張り付いていることの怖さについて考えるつもりだったが、過去日記でそのあたりは何度も言及してることがさっき読み返してみてわかったのでひとまず考えるのを中断して過去の自分の意見を読み返す。老化による記憶力の低下とい…

よみがえる原理主義

先日も書いたようにビーケーワン怪談大賞に投稿した「歌舞伎」という話が大賞をいただき、その後くわしい選考過程も公開されました。この貴重な経験にくわえ、8/11の日記にコメントを下すったid:sakapi(佳作入選作「ねじれた人と折れた人」の作者)氏とのや…

「第3回ビーケーワン怪談大賞」

で、大賞をいただきました。 http://blog.bk1.co.jp/kaidan/ 受賞作以外の「浄霊中」「着信」あたりも自分ではけっこう気に入ってるのでよかったら読んでみて。

油断したら、 いや油断しなくても 気づいたら余白や行間に囲まれている。 そして余白はわれわれの無意味を 意味ありげにみせる額縁の役目を果たし 行間は鏡のようにやつら自身の顔を 反映して隙間という隙間はいつも やつらの大好きなやつら自身の顔でみたさ…

幽霊と部品

幽霊が姿をあらわすとき、その材料になるのは われわれが外界から受け取るさまざまな情報刺激のうち 認識の枠からこぼれ落ちて余ったものたちです。 われわれが五感を通じて入手したさまざまな情報を パズルのように組み立てて世界を自分の中で再構成するに…

幽霊からストーカーへ

このところすごい勢いで出てる「超」怖い話シリーズ 最新刊を読んでいます。(『「超」怖い話Ε』竹書房文庫) シリーズの現在の編著者、 平山夢明氏には「東京伝説」という別シリーズの著作もあって そちらは幽霊とか超自然ものではなく ストーカーとかおつ…

無意味を怖がる本

幽霊の「無意味」な恐怖を味わうには実話怪談物が最適。私のイチオシは、中心に意味の空白を孕んだまま構築されてしまうドラマが恐ろしい平山夢明編著『「超」怖い話』シリーズだが、老舗の『新耳袋』シリーズのドラマにならない断片性は九十九話の積み重ね…

幽霊とは話にならない

夏なので「幽霊」について考えてみよう。 私の持論では、幽霊というのはみなどこかしら気が狂っている。完全に正気な幽霊というのはありえない。いたとすればそれはファンタジーの住人としての幽霊であり、ファンタジーというのは現実を反転させた空想界の出…

実力について

アッシャー家 ブックオフでビデオを買う。聞いたことはあったり聞いたこともないようなホラー映画や女族物がやけに充実したその日の棚だった。迷った末『アッシャー家の惨劇』(ロジャー・コーマン)と『チンピラ』(青山真治)を買った。『アッシャー家の惨…

今週のウルトラQ

今週のウルトラQ(「楽園行き」)をビデオで。脚本は素晴らしいというほどじゃないものの水準作だと思うのだけど、演出がかなりまずくて脚本の設計に届いてない寸足らずな部分を補いながら見ていらいらする。 先週は高橋洋脚本だったらしいけど見逃した。ビ…