超怖Η全話ショートレビュー(3)

平山夢明編著『「超」怖い話H(イータ) (竹書房文庫)』(竹書房文庫)全話レビュー三回目。

萌し

1ページ目に省略/圧縮されている情報量がさりげなく只事でない。平山節は内に視えないバロウズを飼っている。また返答に見える「うーん」の入り方の呼吸とか、才能はこういうところから溢れ出る例。

電話

定番ともいえる怪談を、奇矯なアレンジではなくさばき方(切り上げ方)で読ませる手つきに注目。進境著しい加藤一氏の余裕が窺える。

金縛り二態

実話の取り留めのなさをどう記述するか、という問題への超怖的教科書が示す回答。

レベッカ

タイトルに二重の意味を読むのは深読み? そのうち一方(正解らしき方)の意味で取ると、ある出来事と現在の間に横たわる歳月が静かに(そして又いびつに)暗示される。
この話に限らないが、読点の少ない文章で畳みかける平山氏の文体は小説より取材ベースの実話系作品の方が、多くの場合肩の力が抜けてか効果を上げていると思う。いったん(体験者によって)語られた物語を再び(作者が)語り直す、という距離の発生が効果に味方するのか。(小説は書き手には体験中の出来事そのものであり、余裕のない実況中継的な面がある。実話怪談が現実のフェイクであるのに対し、小説はフェイクの現実であり矢印は正反対を向く。)

ベテラン

超怖スタイルの見本的小品。

見てません!

いかにも加藤氏らしい小品。