超怖Η全話ショートレビュー(4)

平山夢明編著『「超」怖い話H(イータ) (竹書房文庫)』(竹書房文庫)全話に短く感想をつけるシリーズ。
前回一話分飛ばしていたので、今回はその話(「オーラ」)から。

オーラ

幼児語の意味を明かすタイムラグのさりげなさ。エッセイ風。

土いじり

ガスメーターとか室外機の下、というどこか対象の的の中心を外したような選択が生々しい。腕利きのスナイパーではなくノーコン投手のピンボールの怖さのように。

出航

この短さで語りきるのが凄い。この短さで語りきるべき話でもあるだろう。

ホテル

平山氏の怪談では平凡な日常の中心がストレンジな論理に奪われる。加藤氏の怪談は日常の論理が維持されたまま全体が傾いてそこからずり落ちていく。この厭な気配の持続っぷり。

置かずの場所

平山怪談のミニマルな完成形、の極限に近い例?

開閉

同ミニマルな完成形、の典型例?

事故物件

これも平山怪談定番の業界裏事情物。
人は幻想にしか金を払わないから、どんな商売も客に見せられない現実を隠し持つ。この現実が客の側で幻想として(幻想の裏にある現実、への幻想として!)膨らめば都市伝説の、業界側で秘密を共有するうしろめたさが膨らめば怪談の温床となるだろう。小声で交わす会話にはここぞとばかり普段は聞きとれない雑音が紛れ込む。「裏」が心霊と親しい理由はそこにあると思う。
ただし不動産業界の特殊な点は、業界の「裏」と特定の客の日常の接触面がやたら広いことか。