無意味を怖がる本

 幽霊の「無意味」な恐怖を味わうには実話怪談物が最適。私のイチオシは、中心に意味の空白を孕んだまま構築されてしまうドラマが恐ろしい平山夢明編著『「超」怖い話』シリーズだが、老舗の『新耳袋』シリーズのドラマにならない断片性は九十九話の積み重ねとともに無意味も蓄積し、読むうちに妙な感覚におそわれる。工藤美代子『日々是怪談』は端正なエッセイのスタイルに意味不明な体験をくるんで怪談嫌いの人にも読みやすそうだが、その分知らぬ間にとりかえしのつかない場所へ連れていかれるかもしれない。