2004-06-15 短歌日記 短歌 未だわれを産まざりし母老い続けみづからの死に間に合はぬ 産 独身の父聴きしてふレコードの溝ほどかれて途となるらむ ポケットに死蝶集めし少女ゆゑ亡き姉に似ゆうすき眉毛の 墓場村字ものぐるひ夏たけて故郷捨てたる者らみな病む あかつきの鉄路にわれを捨て来しを思い出のごと聞かせり母は 縊れ死の血筋にわれもありしかば薄日さす野を鳶めぐらしむ 鯨幕ひきずりて去る葬儀屋の眼帯の目にさわぐ麦の穂 家鳴りのやまざる日々をながらへて白髪は夜の沼へ注げり