読んだら書く

●『癒しのチャペル』辛酸なめ子
 自己卑下のスタイルからセレブを上目遣いにほめ殺しの言葉でつつみこみ地獄の底へひきずりおとすという黄金の展開を浴びるように堪能する。新日本vsUWF5対5イリミネーション・マッチにおける上田馬之助の仕事っぷりをほうふつとさせる。なめ子氏のような本当の天才の文章を読むといろんなことを潔くあきらめることができて、かつて私はうっかり自分に才能があるなどと勘違いする若気の至りからはずいぶん解放されたように思う。
●『渡辺のわたし』斉藤斎藤
 感想のつづきを。「父とふたりぐらし」という一連において25首目の歌が示す突出した(あるいは底の抜けた)効果、には鳥肌ものである。さりげない挿まれ方なのもいい。たとえばフィリップ・K・ディックを読んだときに出会えるあのとくべつな一瞬のようなものがふいに訪れるということ。短歌に。
http://www.bookpark.ne.jp/cm/utnh/select.asp