さいきんみたビデオ

 ここんところ見たビデオの感想をまとめて書こうと思ったけど、北野武菊次郎の夏』の感想がなんど書こうとしても書けずそういうところにつまずいてまた日記がとまる。『菊次郎の夏』はたけし演じるおじさんがおしゃれすぎると思う。子供がおっさん顔すぎると思った。ロードムービーになることに失敗してると感じた。夢のシーンに魅力がないと思った。なんかことごとく外してると思うのだが、ドラマとしては確信犯的に土台をぐらつかせてあるのでそういう外しが浮き上がることはない。でも狙いの当たり外れと監督の才能を収支決算しながら観てしまうのは不幸なことだろう。
『街角』エルンスト・ルビッチ。後半、クライマックスがどうなるかが見えてきたところからの引き延ばしがすごい。サスペンスに持ち込むわけじゃなく、ハッピーエンドの一歩手前の状態をひきのばし持続させまくる。『真夜中のパーティー』ウィリアム・フリードキン。ゲイ差別が標準の時代だったからこそ逆にここまでリアルな精度のキャラクター造型だったんだろう。ホモフォビアの男のゆれ方とその着地点がちょっとできすぎ、と思ったらちょっとしたどんでん返しというか外しが。大島渚の『帰ってきたヨッパライ』は十年くらいまえ大井武蔵野館で見て、そのときは途中で冒頭のシークエンスにもどる構成をほんとに事故(そんな事故はありえないだろうけど)かと思って落ち着いてみてられなかった。見直したら傑作。リヴェットの『セリーヌとジュリーは舟で行く』みたいな不思議なフィクションの扱い方。『影の軍隊ジャン=ピエール・メルヴィル。当局による処刑とレジスタンス内部の粛正でひたすら暗い傑作。石炭がないので部屋の中にさらに小部屋をつくって寒さをしのいでた男を見習いたいと思った。
『007ゴールドフィンガーガイ・ハミルトン。007はやっぱり素晴らしいのでもっともっと見なければいけない。人の死になんの重みもなければ快楽もないのがいい。ボーリングのピンのように人が倒れる。仮面ライダーなど日本の実写ヒーロー物への007の影響も検証さけなければ。森一生皆殺しのスキャット』は70年代のTVドラマをゆるくのばしたみたいな映画で、主役の松方弘樹のキャラに一貫性がない。ガソリンスタンドのおやじが片腕だったりハモニカを吹く殺し屋が出てくるところはマカロニ風? なんか70年代をむかえた巨匠が自分を見失ってる映画という気がしたが。『エボリューション』アイバン・ライトマン。中途半端。ギャグも物語もなんだか本気じゃない、という印象がした。作り手はこの映画が描いているものを本当は何も信じていない、つまり正気なのではないか。『SF最後の巨人』ロバート・クラウズ。世界観の設定がズサンなのがいい。SFはズサンなほうがいいのではないか。コミューンの用心棒で超人的なヒーロー役のユル・ブリンナーは、調べたらこのとき60才くらいだったと今わかりびっくりした。この何年か前には『ウェストワールド』で元祖ターミネーターみたいなロボットを演じてたんだから凄い。