いじわるな天使から聞いた不思議な話

 今図書館から借りてきて読んでいる本の中に『いじわるな天使から聞いた不思議な話』という穂村弘の本がある。歌集じゃなくて童話風なみじかい話が十五話はいった本なのだが、こんな本が出ているとは今まで知らなかった(94年刊)。穂村氏は歌集のあとがきの散文が、あとがきにはふさわしくないと思えるくらい面白い歌人なのでこれはぜひ読まなければならない。しかしタイトルがちょっと地味というか、表紙もタイトルと見合ったものであんまり惹かれないなあ、童話っぽい話みたいだし……と本を手に持ったまましばらく考えていると、帯に目が止まった。
 帯文を大槻ケンヂが寄せている。これがじつにオーケン節な帯文なのだ。
バースデーの直前に死んだ恋人の妄想を幻聴に聞くような……とにかく不思議で美しい本です。感動して、クラクラしちゃいました。」
 オーケンはけっこうよく帯文を書く人だと思うけど、こういう気合いの入ったオーケン節で書くことはあまりないような気がする。その気合いが気になりながら借りてきたのだが、読んでみるとたしかにこれは気合いも入ろうというものだとわかる。ちょっとオーケンの掌編と似たテイストのある、ゆがんだメルヘン風ショートショート集だったのだ。
 まだ半分くらいしか読んでないけど、中にはちょっと詰めの甘い惜しい話もあるけど、このテイスト(帯文参照)、そしてみじかい話にアイデアを次々投入するサービスのよさは非常に惹かれる、いい本ですこれ。そしてこの過剰なサービスのよさ、気前のいいアイデアの投入っぷりは初期穂村弘の短歌の特徴だったんではないかと思ったりもした。おいしいところだけでできてる、みたいなところ。

目薬をこわがる妹のためにプラネタリウムに放て鳥たち  穂村弘