短歌日記

 参加中の題詠マラソン2004 、3/14までの投稿分。()内はお題。

いま地球空洞説を支持するともれなくひび割れるくすり瓶 (01:空)
多い日も安心してる うたた寝にひろがっていくお墓でねむる (002:安心)
ふかづめを運ぶ線路がくつしたの穴から穴 たそがれのみらいへ (003:運)
ぬくもりを残しそうな手もつぼくに鏡のぼくが目を合わせない (004:ぬくもり)
放火からかえってこない放火魔を兄の名前でよぶいもうとが (005:名前)
アフリカを出口ときめた土砂降りの動物園であれがアフリカ (006:土)
めのまえに数学博士あらわれて消える終点海芝浦で (007:数学)
ごきぶりに食べつくされてからっぽの姫ごきぶりのうごきで動く (008:姫)
まどろみの圏外からのほうき星じみたひかりは昨日をよぎる (009:圏外)
鰐の背でチーズを削り終えてなお茹であがらないパスタが沼で (010:チーズ)
まだ誰もめざめてこないあけぼのに犬は悲観をぼうぼう語る (011:犬)
人生で裸足で家にかえるのは何度目だろうきみは初めて (012:裸足)
窓はよく水彩画めき包帯を解くように剥くりんごの皮を (013:彩)
迂回路はみずうみに消えくりかえし峠のわが家が鳴るオルゴール (014:オルゴール)

 題詠って、作品の成立に対し無責任になれる(動機の棚上げ。自分の言葉じゃないものを芯に据えられるetc.)のでヘンな自己表現の欲から解放されて、脳の意外な部分が偶然カチカチ働いて思わぬ傑作ができるんでは……という淡い期待も若干あったのだけれど、今のところこれだというものはまだできていない。そう悪くもないとは思うが、あんまり意外性はないというか、なんとなく見慣れたようななじみある言葉ばかりが並んでしまっている感じ。