かびである

 前々から気になってはいたが見ないようにしていた現実を今日直視してみた。
 押入れやテレビ台のなかに詰め込まれたビデオテープにはえたカビである。ほとんどが映画の録画されている数十本のテープであるが、一部にカビがはえていることは以前から気づいていて、画像が再生できないばかりか、再生しようと試みた後は再生ヘッドが汚れて何度もクリーニングしなければ元に戻らないのである。そんな厄介なカビはどれくらい広がっているのか。
 相当やられていたのである。想像以上であり、ほっておけばさらに広がっていくので、まずはすでに感染したテープを隔離しなければならない。で隔離した。時間を半永久的に閉じ込めるメディアであるところのフィルムやビデオテープであるが、それらのメディアじたいは時の流れにむきだしであり、ほっておけば侵食され朽ちていくのである。だがカビのせいでおだぶつという展開は老衰を待たずに病に倒れたという感じで残念だ。ホトケのなかでは「インスマスを覆う影」がいちばん惜しい。小中千昭脚本・佐野史郎主演のテレビドラマ。もう二度と見られないのか。