短歌日記

題詠マラソン2004 、6/19までの投稿分。()内はお題。

071:追
みえないもの目で追うつもり点線が白昼まちを這い回るんだ
072:海老
心臓で海老を茹でます親方 さあ親方 四股でもふみますか
073:廊
逃れないあなたになったおめでとう朝までつづく廊下おめでとう
074:キリン
炎天をキリンがあるく回路とは思えなけれどあるく炎天
075:あさがお
あさがおの蔓で私が動けない隙に切符を拝見されます
076:降
やぶれるといい匂い しない匂いの例おもいうかべるところ 降雨
077:坩堝
母親のドレスのなかで私しかもういない 坩堝たとえば手足も
078:洋
この匂い洋梨だねと何もないところを歩く しびれた膝で
079:整形
建物でいえば戸口をふさぐような君はぐるぐる整形するよ
080:縫い目
ほどけたら縫い目はみないことにする半音階でくちずさんだり
081:イラク
くらがりでイラクをさがす ろうそくが照らしたものは地球儀じゃなく
082:軟
すがめして見ていることも軟禁にちかづく船の遠い行き先
083:皮
くだものの皮をつないだドレスしか売らない店にあれからなった
084:抱き枕
抱きにくい抱き枕しか抱いたことない 樹のような寝息をたてる
085:再会
屋上と屋上がつながって 道 になるほどのふるい、再会
086:チョーク
虻蜂のいこい場となるひだり胸 チョークで路にかかれた人の
087:混沌
混沌を首ながくして待つぼくら終バスをまつひとにまぎれて
088:句
泣くほどの文句があってあじさいがこなごなになる手紙を読むよ
089:歩
三鷹まで歩いてかえるからけつのぼくら 三鷹に家はないけど
090:木琴
あれぜんぶ木琴でしょう鳴るでしょう線路はめぐる海のほとりを
091:埋
道なりにゆく埋立地うめたての海の気配をこわがりながら

あー世界がかゆいからだれか掻いて。近くにいるひと、痒いとこの。