変な小説

「桜の開花は目前に迫っていた」保坂和志(『新潮』6月号)
 保坂氏の小説は読んだことがなくて、エッセイは何冊か読んでいるし『書きあぐねている人のための小説入門』という本ももちろん読んでいて、小説家として信頼している人であるにもかかわらず『季節の記憶』だったかを冒頭だけ読んですぐ放置したまま、どういうわけか今まで小説は読まずにいた。
 これはちょっと藤枝静男みたいな変な短篇だった。藤枝よりもふにゃふにゃしている。たぶんこういう小説は保坂氏は今まであまり(全然?)書いてないのだと思うけれど、こんな小説(保坂氏が実名で登場する阿部和重中原昌也の合作「赤ん坊が松明代りに」への実名での応答が含まれている)も書いてしまう保坂氏の小説はやっぱり期待してちゃんと読んでしまおうと思った。そしてこういうあからさまに少し変な小説ももっと読みたい。