雨の日は蝿が飛ばない

 君があのおぞましいお喋り魔を妊娠してるあいだ、ぼくはやたらと話の腰を折られてうんざりしながらテーブルクロスの端で眼鏡を拭いていた。なんて品のない冗談! あいつはもうじき出口になる君の部分のことばかり話題にしたがる。いったい父親がどんな顔か見てみたいよ……ぼくはそう口には出さなかったけれど、察しのいいことにかけては介護犬並みの坊やが君のスカートの中から一葉のスナップを放ってよこした。なるほど、こいつはたしかに君好みの童顔で悪くない。窓からそっと坊やのパパを逃がした途端、たちまち雨に叩き落とされ路面にキスしているところへ一台目のバンが通過。