ひまわり

仕事もないのにこんないい天気だ。
いい天気だからって、どこに出かけるにも金はいるのだ。
たとえ金はいらなくても気力が少しいる。
金がないので気力が出ない私は、このいい天気を、カーテンで半分隠れた網戸の窓越しに寝たまま見あげる。
ひこうき雲が使用後の傘カバーみたいによれていくのを。
やがてとなりの家のアンテナの先っぽにひっかかるのを。
誰かがテレビを見てたら、ものすごい障害が発生してるだろうに。
留守で残念。
臨時ニュースの数々で、番組は付箋のびっしりついた本みたいになってるのに。


うちのテレビは何も起きなかった。
うちのテレビは選挙の話でもちきりだ。
ゆうべ誰か(顔も知らない。窓をノックした手だけ見えた)に選挙権を五千円(それでガス代を払った)で売ってしまったから私は選挙に行けない。
私の選挙権で投票に行く人は誰に入れるのだろう。
かんがえただけで頭は蝉の声でいっぱいだ。
本当は知ってるがここでは言わない。
あわてて買い戻して庭に埋めてひまわりの種を植えなきゃ、ならなくなるので。
もう遅すぎるのに。九月にひまわりだなんて。


ひまわりのかわりに見張りに立ってくれる人を、雇う金なんてないよ。