2005-09-06 ■ fiction fiction 人間には表紙しかない 君の顎にナイフを入れて何枚も何枚もめくった顔のどこまでが顔だろう? 腹で降る雨 赤いレインコートから手だけがのびていて誰も着ていない。手は傘を握っていた。傘は霧雨に吊り下げられたように浮かんでいた。 積み木塔 エレベーターは百階建ての百階を超えた。階数ランプが足りなくなったのであわてて緊急電話をかけると、別のエレベーターで追いついた作業員が二百階までのランプを取り付けて誇り高く帰っていった。そのときエレベーターは二百階をとっくに過ぎていた。