リスト

 屋根から急に靴が降ってくるとしたら、それは屋根の上で裸足になった者がいるということだ。ぼくにはわかる。
 靴底には簡単な手紙が一通入っている。今すぐ食べたいもののリストが添えられて。
 返事と、スナックや缶詰の山ほど詰まった紙袋を託して弟を送り出した。
 
 二時間後。屋根から弟の靴が降ってくる。
 中には今すぐ飲みたいもののリストが入っている。

階段行き

 買えるものが何もない階でぼくはエレベーターを待つ。手ぶらでドアの前に立つのはこの中でぼくだけ。みんな両手を紙袋でふさぎ、階数ランプの動きをおとなしく見守っている。存分にお金と欲望を使いきったことに満足した顔。
 エレベーター・ガールの役は大いに苦手とするところなので、ぼくはドアの前を離れた。みんなが非難がましい目を向ける。こういう目で見られることには慣れている。ぼくはゆっくりと胸を張って階段に向かった。そして道に迷った。