弱虫の惑星

 花嫁から下水道へざーざー血が流れていくところをぼくは目をかがやかせて録音してる。
 ぼくの目のかがやきは心がからっぽになってる証拠だから勘違いしてドキドキしないで。
 勘違いしてざーざー血が流れ込む先にすてきな国が待ってるだなんてまさか思わないようにね。
 花嫁はたそがれの九段坂でひきずりだされた事故車の思い出を、ひどい音痴な歌に乗せひとつ残らずぶちまける気満々なのでぼくらは足のうらで耳を塞ぎあい今日も眠れない。
 金切り声のうたごえが排水口に白いドレスふりまわしながら吸い込まれていく浴室の、真っ赤なお湯に眉まで浸かるぼくは熱い国のだらけた植物みたい。
 白旗をかかげた音符のような手足だったよ。