買い物ブギ

 パパにもママにも知られずサイボーグ手術は無事完了。全身が映せる鏡に風呂上りの私がプラスチックのボディを公開してる。頑丈でたとえばタンクローリーに撥ねられた程度じゃ傷ひとつつかない、この愛しいボディ。もちろん今日一くんにだって手術のことは教えてない。反対されるに決まってたからだ。私は周到に準備してカナダへのホームステイを装って入院に成功した。ネットで知り合ったカナダ人に協力を依頼、両親や今日一くんとの手紙のやりとりも見破られず偽装してのけた。ちゃんとカナダを経由して手紙を出したのだからエライ。現実の私は新大久保のビルの地下にある違法病院に一ヶ月間寝そべってた。枕元のテレビでヤコペッティの同じビデオを何百回も繰り返し見ながら。
 私みたいなサイボーグになりたい子がわんさかそこを訪れ、博士とおもにお金の相談をして肩を落として帰っていく。風俗とかで貯めこんだ通帳を博士に見せてはあっけなく首を横に振られてた。たまたま近所のどぶで三億円拾って警察に届けなかった私だから、こんなレアな手術が受けられたのかも。考えたらすごくラッキーだったのかもね。私が正直者じゃなくってほんとよかった! でもこれで一生肌のどこを裂いても血が一滴も流れない体になったから、私は大切な趣味をひとつ永久に失ったことになる。趣味=リストカットじゃないよ。献血。かわりに私が得たものは壊してしまう心配のいらない人形。壊せるものなら壊して御覧なさいよ、の誇り高い自動人形。どんなもんよ?