ひどい漫画との再会

駅向こうのでかいけど滅多に行かない古本屋で丸尾末広『キンランドンス』購入。丸尾氏の本の大半は昔ひとに貸したきり音信不通なのでこれは十数年ぶりに読んだのだが、投げやりなストーリーが全裸で糞尿にまみれつつ怖ろしくよく切れる描線で少女もおっさんも美少年も正確に描かれながら結局のところまったく意味がない、という何だかよく分からない潔さがすばらしい。丸尾氏の作品中でもトップクラスの意味のない作品が集まってるのではないか。裏表紙に「なんてひどい漫画なんだ!!」と書いてあるがまったくその通りである。このひどさに十数年前はあまりピンとこなかった記憶があるが、今読むと本当にひどいものであって、まったく素晴らしいものだと思い知った。私が文章で何か(詩とも小説ともつかぬようなものを)書こうと十四年くらい前にし始めた時、いちばん手本にしたのは丸尾末広であり、丸尾末広の漫画のようなものを文章だけで書くにはどうしたらいいか、を考えることがその出発点になっている。でたらめなことのみが正しい、という考えは今もあまり変わっていないと思う。でたらめを書く技術以外はべつに欲しくない。