071201

他人のために何もしたくない。と思いながら寝ていると、夢に他人が現れた。他人の頭はくずれかけた積木のようだった。私は被害にあわぬよう道の端によけて歩いた。
それが気に入らなかったのか、他人は血相を変え私を追ってくる。
左右に頭を、ぶるんぶるん振り回している。とれてきた頭の一部が逃げまどう私の肩や首筋にふりそそいだ。冷たくて気持ちが悪い。ああ他人がくっついた、と思うけどハンカチで拭いてるひまはない。
追いついたら何をされるかと思うとどきどきする。
しばらく逃げつづけるうちに、他人の頭はほとんどくずれ落ちてしまったらしい。
自分が何をしていたか、忘れてしまったのだろう。私を追うのをやめて、どこかに買い物に行ってしまった。
買い物かごを提げていたので、それはまちがいなかった。
しかし彼女の歩いていった先に商店はない。
この夢はじつはまださめていない。



他人のあとをつけるのはイヤなので、双眼鏡で覗いてみた。
買い物かごが砂丘のてっぺんにぽつんと落ちている。
女は砂に呑まれてしまったかもしれない。
砂嵐があったとは思えない、目の痛くなる青空が見えているのだが。


青空には花束型UFOがとんでいる。
地上から鉄砲で撃ち落そうとする猟師たち。みな鼻毛が多くて息が苦しそう。


猟師のひとりが私に気づいたらしい。
顔を真っ赤にして何か叫ぶと、銃口を私に向けて構えた。
あわてて近くにあったコンビニに私は飛び込む。
「コンビニ」という看板が出ていたのがちょっと気がかりだったが…。


「見間違いですよ、お客さん」
何も訊いてないのに店員が話しかけてきた。
「うちは『コニビン』ですから」
よく間違われるんですよねえ。そういいながら自動ドアを出て店の看板を指さしている。
くちぶえのように軽い銃声がひびき、店員は笑顔のままかたんと道に倒れた。


私はコニビンの死んだ店員のかわりに、店員のふりをしてカウンターに立った。
死体は誰かが片付けたのかもうない。
私は「死体は誰かがもう片付けたのかの歌」をうたった。
一番をうたい終えた時点で、最優秀歌唱賞の受賞が決定した。
速報が店内放送に流れたのだ。