「わたしは天国に雇われている」
わたしのかたる言葉は天国の意志を地上で響かせるための訳語だ。
わたしの空腹は天国に空きが出ていることを体を使って示している。
地獄には定員がなく、だからたいていの者は地獄に落ちていくのだが、天国に空きが出ればわたしが何かを食べた時、その食べられた物が天国の言葉としてさし示しているあなたが天国の扉の前に立つことになる。
「そんな話を朝までしていたんですよ。ほかには何もしちゃいないんです、そういう楽しい関係じゃないんです」
男の両目はまばたきのたびに左右入れ替わっていた。
そのことに気づいているのももちろんわたしだけである。
わたしのほんとうの意志は、その場所を天国にあけわたしてあの川のほとりの日なたにころがって時々猫にくわえられている。
今朝は棘の多い草の根元で、ゆうべの雨の雫をいくらか浴びながら目を覚ました。
男の両手は拍手のたびに左右入れ替わっている。
わたしはその毛深い手首を同時に掴んでしぼりとるように泣いたのだ。