顔 耳をすませると、耳をすませる音だけがきこえる。誰もいないのではない。耳をすませる者だけしかいないのだ。踏切越しに見合わされる、名のない顔の群れのように。 ナイフ 夜に寝室にいる。窓ががたがた震えるほど闇が押しつけている。ガラスに映る髪の毛…
廃人の仕事 片足をひきずりながら歩く女には意識がなく、ひきずられているほうの足だけが今では女に残された唯一のものである。あとのすべては天上からふりそそぐ見えない糸の操作が女の意志を肩代わりしている。 女は時間をかけてたどりついた玩具売場のレ…
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