小説ノート

  • 小説が動く

小説を最後まで完成させるために必要なのは、書きつつある小説をつねに自分で制御できるものにしておくこと。つまり自分の手に余るようなものは書かないことだが、それは初期設定(自分に書きやすい題材やキャラクターにする)の段階だけでなく、書きながら小説がどんどん自分から離れていってしまうことを食い止めるため、つねに目を光らせていなければならない。
小説というのはちょっと気を抜くと、いつのまにか自分(が書いてきたにも関わらず)では続きを書けないものになってしまっていることがよくある。「キャラクターが勝手に動き出す」などとよく言われるが、時に登場人物やストーリーは書き手の力量を超えて動き始めてしまい、その結果行方不明となって永久に文字の上にはあらわれないことにもなる。そんなどこにも存在しない空間を動き回るキャラクターなどに用はないのであり、あくまで文字として小説の中を動き回るキャラクターは、書き手が自分に制御可能な小説を書き続ける限りにおいて出現可能なのだ。