2003-08-30 小説ノート 小説 「バナナフィッシュにうってつけの日」J・D・サリンジャー(『ナイン・スーリーズ』野崎孝訳より) 中条省平『小説家になる!』で詳細な読みが示されていたのは覚えていたけど、というかその印象があったから読んでみたのだけれど、あらすじはすっかり忘れていたし、印象もけっこう違ったみたい。小説はやっぱり実物を読まなきゃだめか。 三つのシーンからなる短篇。ほとんど会話で成り立っているんだけど、会話の饒舌が読者に断片的な情報をもらして「この先」への興味をひきつつ、同時に「この先」への目隠しにもなってて先の読めない、見通しの悪い小説になっている。なんとなく叙述トリックみたい。客観的でカメラに徹しているかのような語り手による周到な騙りくち。