短歌日記(火星短歌)

 このたび火星大接近を気にしながらつくった何首か、より以前にも、火星のことは何度か短歌にしていたような気がしたので、ひろってみた。すると「火星」という語がつかわれている自作は(大接近モノをふくめて)ぜんぶで四つありました。いずれも自分ではけっこう気に入っている出来なのですが、それは火星を素材にしたせいかどうかよくわからない。ちなみにトップページの写真は火星です。なんか火星にかぎらずだけど、よその星の写真ってどれもこれも気持ち悪いよねえ。

  • 死にそうな女の日記の更新が止まっているよ 火星が近い
  • さびしいのは火星の色と気づいたらおはようの言える頃にはいない
  • 窓に火星を見ていた姉妹老いつづけ運河を越えて運ばれる髪
  • ぼくが足を滑らせる穴ことごとく火星に通じているのも妙だ

 人類は火星にいつ行く予定なのか知らないけど、月へ行くのとはぜんぜん意味が違うと思う、心理的に。火星はかなり覚悟がいると思います。月からは地球がようく見えるけど、火星から地球はぽつーんと点にしか見えないわけでしょう。そしてみわたすかぎり赤い不毛の土地だもの。人類は本格的に宇宙の不毛さ、無意味さを思い知る道を進むんじゃないか。月へいったり地球のまわりを回ってきた宇宙飛行士は、その後宗教的なひとになりがちだけど、火星帰りの人は虚無的になって自殺したりするんじゃなかろうか。宇宙は人間の精神衛生上このましくない環境だと思うので、これからは飛行士の心のケアが問題になると思う。