短歌日記/敗けながら

今どきわれわれが短歌をつくるなんてことは九回の裏二死走者なし、でのこのこ打席に入るようなものなんだろうなと思う。たぶん10点くらいリードをゆるしている。31点かもしれない。つまり短歌をつくることはまっさらなゼロからのスタートじゃなくて、いきなりマイナスからの始まりだと考えたほうがいいような気がするし、定型はある意味上げ底なんだけれどそれをプラスにかぞえるのは苦しい。上げ底されていることがむしろマイナスであるような地点からつくりはじめて、同点に追いついて奇跡の逆転にいたることがめざされつつ、当然ほとんど果たされないというのがいまどきのわれわれにとっての短歌なのだと思う。そう考えることでなぜかはじめてわずかに希望がわいてくるような気がするので、私はぜひともそう考えることにする。

  • 寝坊した娼婦の靴にゆうべからそして今夜も青い花びら