短歌日記

 油断するとすぐに私は、するするとひっかかりのない一本調子な短歌をつくってしまうので注意。ひっかかりがない=見通しがいいということだから、一首が目的地への一直線な通路と化してあとは到着した場所の良し悪しのみが問題になる。一首の価値は通路の役目を果たしたその一回きりでうしなわれる。そうならないためには、短歌はひとまずニセの目的地を設定してそこへいたる通路のふりをしながら、じつはどこにもたどり着かない迷路にならなくてはいけないと思う。
 といったようなことを現代歌人文庫の塚本邦雄をぱらぱら読みながら思った。

プリンスホテルにて腰拔けの小結がみづぎはだつて美男なり 夏  塚本邦雄