マニアック2000

 前から見たかった「2000人の狂人」がこんな邦題にかわってツタヤにあった。ハーシェル・ゴードン・ルイスの作品は「悪魔のかつら屋」もそうだったけど、妙にあかるくてスタイリッシュでしかも砂漠のようにすさんでいる。何もかもとってつけたようだったから途中、何度寝ても(寝ずにはいられない)起きるたび楽しめた「悪魔のかつら屋」とくらべると、「マニアック2000」は設定(かつて南北戦争北軍に皆殺しにあった南部の町プレザント・ヴァレーが、ニセの迂回路で車ごと誘い込んだ北部の人間たちを「百年祭」の主賓として歓迎するも「主賓」はお祭り騒ぎの中ひとりずつ姿を消してゆき……)がけっこう効いてるので、意外にもネタばれを配慮したくなるようなちゃんとしたストーリーにもなっている。もちろんびっくりするような意外なオチがあるわけじゃないが、いちおう自分の目で映画の進行とともに話を噛みしめて味わってほしいような映画である。
 カントリー・ミュージックにのせて軽快に運ばれる陽気な惨劇は殺伐としているが、生理的な嫌悪感を誘うのではなく、血糊のてらてらした安っぽさやまるで撮影現場の空気を反映したかのような(と空想させる)殺戮のあとの妙に白けた倦怠ムード、の表現などがある種の悲しみに近い気分を観る者に与えるのだ。狂気の町から命からがら逃げ延びた者が、何か事情を知っているふうの警官とともに現地へ引き返してきて途方に暮れるシークエンスや、その後に蛇足のように付け加えられる「二百年祭への抱負を語る町民」のエピソードにもやる気のまるでなさそうでいてどこか律儀な怪奇ムードが、濃厚な倦怠感をともなってたちこめており、これは黙って怖がったり面白がったりびっくりしたり気持ち悪がったりしていればいい映画ではないと思わされる。観たあとで自分が何かしなくては、この続きは俺がやらなくてはと思わず腰を浮かしてしまうようなところのある映画だと思う。