短歌日記

題詠マラソン2004 、5/15までの投稿分。()内はお題。

生き物のいない星では出血が稀れだから包帯が足りなくて (041:血)
やり投げの槍で撃ち落とされたときぼくらは夏の映画を観てた (042:映画)
そこだけが濃くなってゆく暗闇を指で押す スイッチとは知らず (043:濃)
髪や歯が散らばっている秋までのあぜ道をゆく古いダンスで (044:ダンス)
棕櫚の樹をぬすんだあとへ家元を埋めもどすため山ほどのレイ (045:家元)
ゆびだけの生きものになる練習 毛 爪 歯 皮膚を脱ぐ てはじめに (046:練)
ただれてる草 ひびわれた道 きみは機械のとまる音でめざめた (047:機械)
振り子しか音をたてない 知恵熱がふたたび知恵をうばう世界で (048:熱)
はじまりは虫歯のようにち く た くといずれ会議をつつむ潮騒 (049:潮騒
祝福とおんなじ意味のくちぶえを吹くひともいる稀れに隙間で (050:おんな)
欠けているあと半分を痛がれば月のあかりのふりつもる皿 (051:痛)
まちがえた声であなたを呼ぶ部屋のどこにでも手は壁ほど白い (052:部屋)
ゆび先でふたつに折れた白墨のどちらを棄ててえがかれる円 (053:墨)
日なたしかない道に出る 燃えさかる へくそかずらのリスクをはかる (054:リスク)
雨ばかりつづく日記に人間の世界は溶けてのち穴ひらく (055:日記)
墓石を小窓のように磨く手が墓のうちなる手とさぐり合う (056:磨)
ありえない表情をするガーゼしかまとわぬ姉が手鏡にいて (057:表情)
目をとじて行ける何処かは廃屋の八百屋が燃えたにらをならべる (058:八)