ガールフレンド爆破

 スクールバスから降りてきたのは全員頭部が火の玉になった生徒たちで、あたりの気温がそのせいでにわかに上昇する。窓から覗き込むとバスの天井が煤けて黒い。頭が火の玉になった子供は顔の見分けがつかないので、迎えに来た親たちは着ている服で我が子を判断する。だが学校では今生徒どうしで服の交換が流行っていたし、ぼんやりした子の親はたいていぼんやりしている事情もある。だから誤ってよその子を連れ帰るケースが続出。夜もふけてからこっそり正しい組み合わせに戻しあう親たち。
 私はガールフレンドを爆破しに出かけた。家を出ると断崖のように階段がそびえ立ち、これを登りきらなければどこへも行けない。半分くらい登ったところで遠くに海が見えた。座礁した船の船員が海鳥に襲われながら手を振っている。私は手を振りかえしたが、彼らからこちらが見えているかは分からない。なぜなら私は、階段の色とよく似た色のシャツを着ていたのと、海鳥の攻撃はまっさきに人間の目を狙うからだ。
 だが今はガールフレンドの爆破についてのみ考えるべきであろう。階段はなお尽きなかった。ガールフレンドは昏々と眠っている。目を覚ます前に爆破するのだ。粉々に。