幽霊と僕は

 カーブミラーにカーブミラーが映り込んでいる曲がり道の、鼻歌で自転車を滑らせてくる男とすれ違いながら僕がのぼる夕方。カーブミラーに映っていたほうのカーブミラーが間近に迫ると、今度はたくさんの墓石が歪んでそこに映っているのだ。
 幽霊と僕は、それほどうまくいかないことが君にはわかった。君にはもうじき何もかもわからなくなる。幽霊のことも僕のことも、それから消しゴムの滓を食べたがる猫のことも。今いちばん遠い電柱が、いつか目の前にあるときがくるのを君は知っている。ぼくはカーブミラーの中のふるえる墓石のひとつを標的にきめて、鰯の頭をにぎりしめた。

庭人間

 朝になっても足跡はそこから動かなかった。