踏切を百年かけて渡るために幾つの線路が必要か?という計算に必要な私の歩幅を測るために生乾きのコンクリートを歩いていると、世界がそこから半分に割われた形跡のある垂直な断崖を端まで歩ききってしまいぽかんと波しぶきを見下ろしているうちに靴ごと固まってしまう。しかたなく私は裸足で帰った。

 野良猫だと思い干物をもって近づくと、干物より私のほうを喰いたそうに見つめ返すのでしまった、虎だったのかと身構えた。がそうではない。虎ではないトラ猫の餌に間もなくなりそうな気配の私のほうが、つまり人間ではなく二十日鼠だったのだ。