memo

たとえば私にとって私とは家のようなものです。
それは「入ることができない家」でもあるし「出ることができない家」でもあります。
私が私の手のひらを眺めているとき、私は眺めている手のひらの皮膚の外側にいます。
私が私の手のひらにペン先を突き立てて痛みを感じたとき、私は痛みを感じた手のひらの皮膚の内側にいます。
私は私という家の外側と内側に同時に存在しているのです。
家から締め出されていることを知りながら家に入る方法を知りません。
家に閉じ込められていることを知りながら家を出る方法を知りません。
この二人は同じ人間でありながらいつも二人であり別々にいるのです。
一軒の家の内壁と外壁をそれぞれ反対側から眺めているのです。