wings

 数ヶ月ぶりにご飯を炊いてみようと思い袋の底に残った無洗米を内釜に全部あけて水を張ると、細かいほこりのようなものがたくさん水に浮いたのでよく見たらほこりの一つ一つに羽がはえている。
 以前部屋の中でゴマ粒ほどの茶色い虫が異常発生したことがあり、そのときは小麦粉の中にゴマ粒ほどの茶色いものがたくさん混じっている(そこが「巣」だったらしい)のを見つけても、何故か「小麦の殻か何かだろう」で片付けてそのままお好み焼きを焼いて食べたものだったが、今回のは羽がはえているので私の不注意力(夢の中の人がさまざまなものを見過ごして異常事態を受け入れるような)をもってしてもそういうわけにいかなかったらしい。炊き上がったところを想像するとそれを見た脳が食べ物として認めないことがあきらかだった。
 水を含みかけた米はすべて廃棄。炊いてもいない米を捨てるなんて生まれて初めてのことだ。羽混じりのご飯に尻込みするなんて、風邪で食欲が減退気味とはいえ私に貧民にふさわしいタフネスが不足していることを認めざるをえない。いつもの暗い未来がさらにほんのり暗くなるささやかな出来事だった。