village

 山の斜面につぎつぎとあたらしく廃屋が建てられていく。
 日本各地からかき集められた廃材(あばら家を解体したもの)を組み立てたいずれも人の住めない腐りかけたボロボロの家ばかりが。廃村という設定のオープンセットは、あり余る予算を湯水のように使ってリアルに再現された。それをつくりものだと疑う者は関係者以外いない。
 それぞれの家の戸口から、青白い顔を覗かせる亡霊村人にはオーディションで選ばれた近くの村の老人たちを配置。
 雑草の深い荒れ果てた道を主役の中年俳優がタオルで汗を拭いながら登ってくる。
 すると廃屋の奥の暗闇でうたたねするように死んでいた村人たちが、ぶしつけな足音で破られた永遠の眠りの底から巨大な両棲類のような這いつくばった姿勢で這い出してゆくのだ。
 老人特有のスローモーションのような動きがこの場面にふさわしい効果を上げるだろう。
 中年男は懐からピストルを取り出す(彼は逃亡中の宝石商殺しだった)。冷静に狙いをつけた村人の幽霊の額にむけて引金をひいた。銃声はやまびこによって何度も反復されるうちにコピーが劣化して夏の空の中にやがて消えて吸い込まれる。