ゴミの話

 出がけにアパートの前に出していった燃えないゴミの袋が、夕方帰宅したらそのままで残っていた。いくつか一緒に並んでいたほかの住人のゴミは回収されている。私が出したものだけが残っていたのだが、猫が荒らしたと思われる穴が袋にはいくつもあいており、出かけに置いたと記憶している場所から少し離れたところに袋は横倒しになっていた。近所の猫が袋の中のシュウマイの容器の匂いに興奮して突きまわした挙句、場所を動かしてしまったので注意力の足りない回収の人から見逃されてしまったのだろう。町田市のゴミの回収が集積所から戸別に変更されてから、このように回収忘れの憂き目にあうことが多くて今日でたぶん三度目である。そして近所のかわいらしい猫によってかわいらしく突きまわされて袋に穴があき、割り箸やおにぎりのパッケージなどがかわいらしくはみ出してそのあたりに散らばることもしばしばである。ゴミが散らかるのは集積所時代の場合、私の知らない間に心がけの正しい誰かが掃除しているから目立たなかっただけなのだろう。また集積所で回収漏らしがあったとしても、ゴミを出した人間はすでに自分の手を離れた問題という気分でいるから、ゴミはそのまま持ち帰られず放置されやすいと思うが、自宅前に置き去りにされたゴミをそのまま風雨や猫やカラスに弄ばせておくのは大いに気が引ける。すっかりゴミらしい姿に変ったゴミ袋(中身だけでなく袋じたいがゴミの外見になってしまった)をそっと玄関に引き取って明かりに照らすと、たしかに見覚えのあるシュウマイの容器がはみ出していたのでこれはまさしく私のゴミである。袋を足の踏み場のない玄関の隅に場所をとって、つぎの回収日までそこに置いておくことにする。今は冬だから問題ないが、夏場は回収され忘れたゴミを数日間家の中に収納しておくのは非常な悪臭をともなう数日間だろう。だけど玄関の外や軒下などに放置すれば近所のかわいらしい猫を寄せ付けることになるので、きっと家の中に入れて私は臭いを辛抱することになるだろう。このように回収してもらえなかったゴミの話ばかり書いているのはほかに書くことがないからではなく、書きたいことはたくさんあるが書くのに時間がかかりそうな事ばかりなので、とくに何も考えず推敲もせずに書けるゴミの話を書いているのである。書くのに時間がかかるとそのぶん睡眠時間が減らされて、明日は五時起きなのでそれはつらいから時間のかからないゴミの話を選んだのだ。もっとおもしろい話やためになる話はもっと時間のあるときに書く。