覗いてご覧

 客観的に見れば私なんてかなり悲惨な状況にあるわけである。悲惨というのは不幸だとか失敗してるとかいうのではなく、不幸や失敗(あるいはその反対にある幸福や成功)が発生する圏内を遠く離れた穴の底に横たわって、だらしなく自足している状態。国民の義務が果たせないかわり、ごく当たり前な生活上のたしなみの大半を切り捨てている状態。だいたいこの十年はそういう生活を続けているので、もし今急に十年前の収入(大したものではなかった)が自分に復活した場合、大半は手付かずで見る見る貯金がたまるのかと思うときっとそうではない。十年間切り捨てていたたしなみ(服を買うとか雑誌を買うとか映画を見るとか焼肉を食べるとか)が次々と復活し、増えた分の金はたちまちなくなるのは目に見えている。
 だいたい仕事なんてまともにすればストレスで金を使わずにいられないのだから、ストレスを最小限にとどめて極貧生活を送る現状のほうがマシという判断があって、こういう生活をしてるのかといえばそれもまた違っている。いったん穴の底に横たわってしまうと穴から出ることが億劫で恐怖だから消去法的に現状を維持しているに過ぎない。