事情通

 この世に居る場所がなく、彼女は歴史に残るしかなかった。

対角線

 二段ベッドのすべての二段目でねむられる眠りがつながると、夢はどこまで歩いても尽きないほどだらしなく領地を広げてしまう。目ざめるたび異なる二段ベッドの二段目に、驚いたことに私がいる。その自分ときたら、あくびや歯磨きのしかたまでいちいち目新しいので、それだけに生活は今日も不安でたまらないのだ。

嫌悪

 ぼくは何もかももう同じ文体で書くよ。ようするにそれは宇宙がしゃべる声だ。ぼくはぼくの宇宙の声でしか喋れなく、それはほかの誰の声でもない。肉声なんてくそくらえ。うんこをおたべ下さい。