ベストについて

働かないでいると血中文学濃度がぐんぐん上がっていくのがわかる。これが一日でも働くとあっけなく濃度は半減するし、仕事探さなきゃーとかそろそろ借金かなーとかちょっと本気で考えただけで血中生活濃度は急上昇。沈没する船のネズミのように私の中から文学は去ってゆく。
とはいえ一日家でぼーっとしている日々があんまり続けば不安(おもに経済的な)になるわけで、それはそれで文学が生活に押しやられて体内から抜けてしまう原因になる。
降って湧いたように金が突然目の前にあらわれる、ということが定期的に我が身に起きるのが望ましい(一度にあまりたくさんあると享楽的になるから駄目)。そろそろ金がないな、仕事探さないと…と不安に思い始めた頃に絶妙のタイミングで銀行に謎の金が振り込まれている。そういうのがベストだ。
たぶんその次くらいに望ましいのがプロの作家になることで、書くことでお金がもらえる、というかたちで文学と経済がリンクすることである。だがこの場合「書かないとお金がもらえない」ということから別種の不安につながる恐れが多分にある。
だからベストはやはり、忘れた頃に振り込まれる謎のお金だ。通常は二カ月おきに三十五万くらい。たまに三ヶ月あけて五十万とか、適度な緊張感をもたせるタイミングと額が考慮してもらえるとありがたい。
目に見える具体的なパトロンにはプレッシャーを感じるから、あくまで謎の振込み。
ここは匿名でひとつお願いいたします。