軽薄な奇想の体力

読んだ本。
ぼくがぼくであること山中恒
東京大学「80年代地下文化論」講義』宮沢章夫
『夢のなか、いまも』宮崎勤
『現代小説の方法』中上健次
『むかでろりん』遠藤徹


『むかでろりん』は今まで読んだ遠藤徹の本でいちばんよかった。収録作のいくつかはほとんど傑作と言ってしまえるのではないか。とても考え抜かれたとは思えない寝起きの思いつきみたいな軽薄さをたたえた奇想のフレームを、そこからいろんな苦い汁が搾り出るまでしぶとく踏みとどまって使い切っている。無責任さの魅力は維持しつつ小説としての体力がすごく増大している感じがした。「肝だめ死」なんていうふざけたタイトルの小説に、あんなやりきれない場所までまさか連れてかれるとは一体誰が予想できるだろう?