勇気の見せ方

作品に必要なものは勇気だ。根拠の積み重ねで固めていかないと近づけない場所はある。だが最後まで架け橋が届いているものは作品とは呼べない。
根拠をつなげても届かない場所にむけ、どこかで勇気をふりしぼって跳び移っているのが作品だ。
跳んだ距離が作品の価値に換算できるわけではない。いいかえると、跳ぶ距離と勇気の量はかならずしも比例しない。あくまで作品の価値は勇気の見せ方にある。
万全の準備と練習をつんで百メートル先の標的をめがけることより、地面があるかさえ分からぬ五十センチ先の暗闇にふいに身を躍らせる勇気を作品は要求する。