フロイト先生はいい先生

「不気味なもの」(岩波書店フロイト全集17』所収)を読んだ。これはきっと訳文もいいんだと思うけど、最初から日本語で書かれた論文、というか文芸批評を読んでるみたいだった。ホフマンを分析してるからというわけでもない。態度とか手つきがすごく批評家っぽいので、現代の批評家にフロイトが人気なのも納得がいった。それに想像してたよりずっと読みやすい。よくわからないところもあちこちあるけど、あまり気にならない。言っている内容みたいなものは、たぶん他の人が書いた初心者向け解説書とか読めばわかりいいんだと思うけど、でも分からなくてもこの文章で読むのがいいんではないかと思った。小説をわかりやすくあらすじだけ読んでもしかたないみたいに。
論理というよりすごく微妙なレトリックで語ろうとしてることが多いように思う。私は馬鹿なので論理で最短距離を語られると困ってしまうから、ありがたいことだ。ほかの文章を読んでないので、つねにそういう人だったのかは知らないが。でもフロイト先生とは気が合いそうだと思った。世の中に気が合う人はいつもほんのわずかしかいないので、それは本でも同じなのだが、こんな有名でたくさん本の出てる先生と気が合うとはありがたい。